令和2年3月2日米沢市議会一般質問を聴いて

令和2年3月2日米沢市議会一般質問を聴きました。

私は米沢市議会の教育に関連するものを確認するようにしています。
今回は聴いていて少し残念な気持ちになりました。

気になった一般質問と回答

学力調査の結果だけを学力と捉えているような質問・回答、無関係なはずのICT教育と生活面の関係等、色々と思うところはありました。
私の最も気になった質問・回答を紹介し、私の見解を述べたいと思います。

3:10あたりからの質問内容です。

そこで、塾も無い秋田県の東成瀬村が学力日本一です。
しかし、私が、このごろ、米沢市の街を歩くと、学習塾が増えているような気がいたしますが、授業だけではついていけないのでしょうか?
出典元:米沢市議会一般質問

まさに身近なテーマでしたので、どのような回答になるのか興味が湧きました。
※ただ、これを質問したところで回答内容は決まっていますが・・・。

7:40あたりからが回答になります。

塾に関しての質問でございますけれども、通告にはございませんでしたので
出典元:米沢市議会一般質問

私としては重大なテーマだったのですが、通告されていなかったんですね・・・。
通告していれば何か具体的な数字なども教えて頂けたのでしょうか?

ただ、その場で一応の回答をしてくださいました。

学校教育の中で十分な授業を行っていると認識をしています。
学力向上の違いが塾にあるかどうか、検証しておりませんけれども、学校教育の中で授業が充実していれば学力は向上している、という風に考えております。
出典元:米沢市議会一般質問

十分な教育を行っていないまま放置している、と回答できるわけもありませんので、こう答えざるを得ないという回答でしょう。
学力の向上についても同じです。

ここでいくつか私の見解を述べさせて頂きます。
①学習塾が増えている理由
②学力向上しているのか
③学力向上の違いが塾にあるか
で話を進めていきたいと思います。

学習塾が増えている理由

まず、「学習塾が増えている事」と「授業だけでついていけない事」は基本的には無関係です。
少なくとも当塾は無関係です。

地域情報に詳しい教育関係者であればある程度推測できるかもしれませんが、そうでなければ「授業だけでついていけない」需要があるかの市場調査をすることは難しいです。
そのため、「授業だけでついていけない」という需要が高いために学習塾が増えているわけではないと推測します。
私の推測では、もっと違う視点(子供の可能性を広げるような考え)で塾が増えているように感じます。
これは、ホームページ等で考え方などを見て頂ければわかる事かと思います。

学習塾の需要

さらに、「授業についていけない」という需要のみが塾の需要ではありません。
当然「授業についていけない」というお考えを持つ方の「学校補習」という需要もあるかと思います。
一方で、「全員を一定水準に引き上げる公教育」では満たされない、「より高い教育」を求める方、特に「受験対策」を求める方にとっても塾の需要はあります。
むしろこちらが本筋ではないでしょうか?

そもそも「学力」が何を指しているのかも重要です。
「受験」の視点なのか、「一定水準の教育を身に付ける」の視点なのか、それ以外の「夢を叶える力」等の視点なのか、それで見解は全く変わってくるかと思います。
学校の先生は受験のプロフェッショナルではありませんし、授業もそのような授業にはなり得ません。
受験に必要な基礎知識を教えてくださいますし、受験の対策もしてくださいますが、受験プロではないのです。
生活面をはじめとする受験以外の広い範囲での教育をされていますから、受験のプロと差ができて当然です。
※むしろ差が無いとまずいのですが

集団で授業を行う場合、授業の基準をどこに合わせるかという課題があります。
これは授業を計画する立場に立てばその難しさが分かり、答えもある程度明確で、上に合わせるわけにはいきません。
理解度には個人差がありますから、公教育の目的からも一定水準以上を目標に授業を計画されているかと思います。
学校の先生は様々な学力を前に大変難しい授業をされており、そして米沢では基本的には一定の水準を目指した教育がされていると考えます。

話がややそれましたのでまとめます。
学校では難しい、「学校補習」と「受験対策」が塾需要の二大柱ではないでしょうか。
※当塾はまた別のところを狙っているわけですが。
そのため、「授業についていけない」という需要のみが塾の需要ではありません。

結論

学習塾が増えている理由は「授業だけでついていけない事」は無関係です。
ですから、この「学習塾が増えているように感じる」という事から「塾の無い東成瀬村の教育が優れていて、塾が増えた米沢市の教育が優れていないという事はない」と私は考えています。
むしろ塾がある分、学校外の支えがあり、学校教育も水準をあげることができ、教育はよりよくなるものと理解しています。

学力向上しているのか

では、学力は十分に向上しているのでしょうか?
これは「向上」という言葉の捉え方次第で全く変わってきます。

学校の授業が進むことで、多くのお子様はその授業の内容を理解し、知識として吸収されています。
これを学力向上と言うのであれば、私の目から見て日々学力向上されていますので、ご安心ください。
先の通り、一定の水準ではうまく回っているのかと思います。

ただ、一般的に「学力向上」と言えば、「平均的な学力の向上」であったり、「他地域と比べての学力の向上」であったりするかと思います。
そういう意味では、学力向上していると諸手を挙げて喜べる状況ではありません。

私の目から見た事実

「ついていけない」というお子様がいる事は事実です。
しかし、回答として「ついていけないお子様がいます」と言えるわけもありません。

学校教育の中で授業が充実していれば学力は向上している

という「充実していれば」という前提付きの回答だけで安心していい話ではありません。

これから述べさせていただく「学力」は、「受験のための学力」と捉えて頂きたいと思います。
その前提で、米沢市の学力は非常に危機的な状況にあり、その点に言及されていないことが不思議でなりません。
だからそれを改善したいと考え、色々と訴え続けています。
※私の力不足で多くの方には届かないのですが。

偏差値

偏差値は最も身近なわかりやすい指標かと思います。
模擬試験の偏差値や、合格水準の偏差値を見る事で、地域的な学力を知ることができます。

県内の模擬試験において、米沢市のお子様の偏差値は、学校の実力試験の偏差値を大きく下回ります。
例えば学校の実力試験で50程度の方は、県内の模擬試験では40程度になる事もしばしばあります。
逆に学校の実力試験で50程度の方が、県内の模擬試験で50となることは、まずありません。

当サイトで公開しておりますが、米沢市の高校の合格水準の偏差値と山形市の高校のそれとでは大きな差があります。
山形東高校で偏差値65、山形南高校で偏差値61、米沢興譲館高校で偏差値55、米沢東高校で偏差値49等です。
念のため触れておきますが、合格水準の偏差値がそうであって、米沢興譲館高校や米沢東高校の生徒様で偏差値60を超える生徒様もおられます。

この数値からは「学力向上」とは中々言い難い現実ではあります。
なお、県内の模擬試験の偏差値は、全国と比べて高いという事はありません。
かといってそれほど低いわけでもありません。

進路

各高校で進路先が公開されています。
こちらを確認しても大体の学力を知ることができます。
ただし、進路先に偏差値の高い大学が多いという事が優れた学校であることに直結はしません。
しかし、学力をテーマにする以上、進路先は重要な要素になります。

詳しく述べたいところではありますが、説明の難しい要素でもあるので割愛します。

結論

米沢の学力は高い位置にあるとは言い難いです。
これは客観的なデータを用いてしっかりと受け止めて頂きたいところではあります。
だからと言って「学力=教育」ではありませんので、米沢市の教育が優れていないとも言いません。

なお、途中でも述べましたが「米沢市に学力に優れたお子様がいない」という事ではありません。
ただ、平均的に見たとき、上位層の割合等で見たとき、それは他地域に劣っていると見えてしまいます。

学力向上の違いが塾にあるか

学力向上の違いが塾にあるかどうかの検証は大変難しいでしょう。
「無作為に塾に通っている人とそうでない人を比較すればわかる」
と思われるかもしれませんが、事情はそう簡単ではありません。

無作為になりえない

「学校補習」と「受験対策」が塾需要と述べました。
「学校補習」目的の方は、一度学校で学んでいる内容がわからないという状況で塾に来られます。
わかるまで、出来るようになるまで時間が掛かって当然です。
「受験対策」目的の方は、場合によっては偏差値70のような方も塾に来られます。
偏差値は平均点との差で決まる数値で、極端な話5科で500点を取り続けても上がったり下がったりする数値です。

ですから、「塾を利用しない人」と「塾を利用する人」とでは学力的な偏りがあり、無作為ではなくなっています。
このようなケースでは無作為な比較をする事が出来ません。
塾を利用した場合とそうでない場合の「パラレルワールド」を知ることができれば判明するかもしれません。

塾を利用した方の学力向上データ

これは一定のルールを設ける事で調査する事が可能です。

正確なものを持ち合わせていないのですが、正直なところあまり高くなかったはずで、20%とか30%とかだったはずです。
先の「学校補習」と「受験対策」という需要がある方という前提のため、学習塾の学力向上の割合はそこまで高くはなりません。
かといって、「学力の相対的な著しい低下を防ぐ」という効果もあるでしょうから、学習塾が無意味なわけではありません。

ただ、塾を利用した方の学力向上データを見たところで、学力向上の「違い」が塾にあるかどうかはわかりません。

常識的に考えて

お子様の自立を抑制し、学習塾に依存させてしまう場合は「よくない教育」と言えるとは思います。
しかし、塾が教育にマイナスの影響を与えることは、基本的には無いものと考えますがいかがでしょうか?

学校とは異なり、必ずしも通う必要のない学びの場に足を運ぶわけです。
試験で得点を取ることができるようになる術を教わることができます。
学習習慣のない方が学習習慣を身に着けたり、少なくとも塾では勉強できたりするわけです。

「学力向上の違いに塾が関係ない」とは言い難いと思うのですが。

結論

「学力向上の違いが塾にあるか」は検証がそもそも難しいです。

しかし、「違いが無い」という事はまずないでしょう。

残念な気持ちになった理由

17:35あたりからの内容です。

さきほど教育長もおっしゃったように、学校の授業では十分なんだと。
塾はそんなにも重視していないというか、しっかりとした指導を一応やっているから、もう学校教育で十分なんだっていうお言葉を聞いて、少し安心した。
出典元:米沢市議会一般質問

これは私の立場としては残念でした。

米沢市の学力を危機的状況と捉え、改善したいという気持ちを持っています。
地域差はあるものの、一定水準の教育ができていると思います。
「学習塾」が全員に必要なものではありませんが、公教育だけでは支えきれない方は必ずでてきます。
「学校補習」と「受験対策」、その両面を公教育のみで支える事は難しいのが現実です。
これを解決するためには公教育と民間の協力が必要だと思っています。

「学校教育の中で授業が充実していれば学力は向上している」が「学校教育で十分」となってしまいました。
「市議会」という公の場で、「学習塾は不要」と言われたような気持になりました。
※そんな意図はないのでしょうが
※また、公的機関としては「学校以外の教育は不要」という立場を崩すことは難しいのでしょうが、いつか現実を受け止め、そうでなくなる日が来ることを願っています。
赤字経営の中で自分の資産を削りながら、時間という命まで削り、年間80日にも満たない休業日の中、深夜まで準備をしている身からすると、複雑な気持ちです。
私がやりたいことで、好きでやっている事なので、過労が「シンドイ」という訳ではないのですが・・・。

残念な気持ちになった一方で

25:20あたりからの内容です。

(英語で)自由にコミュニケーションが取れるようになる、そうすると問われるのは、日本人としてのその文化・伝統を相手から問われたときに、それをすかさず答えることができるという力だと思います。
英語を使うというのは、その自国の文化・伝統を英語で伝えることができる。
それができなければ使える英語とは言わない、のではないかと。
例えば「為せば成る」を子供達が英語で言えるようになる。
「おかし」と「あわれ」を英語で相手に説明ができるようになる。
そのレベルまで、自国の文化を知って、自分の質を高めないと、外国語教育の質は高まっていかないし、会話の質も高まらない。
そういう子供達を育てていくことが、世界に通じる子供達、そして英語教育なのではないかと思っております。
出典元:米沢市議会一般質問

この回答内容は高い理想をしっかりとお持ちなんだと感じました。
学校の英語教育としては技術上リーディングとライティングスキルを強化せざるを得ません。
これを実現する事は難しいかと思いますが、それでもそこを目指すという高い意識をお持ちなんだと理解しました。

最後に

色々と書かせて頂きました。
残念な気持ちになった部分はありますが、私の考え(塾は不要ではなく、適度に必要)に変わりはありません。
むしろ正しい事をしっかりと伝えていかなければならないと感じました。
「米沢市には夢を叶える塾が必要」と思ってもらえるよう、これからも精進していきたいと思います。

教員の友人談

米沢市ではありませんが、友人が言ってくれました。

学校にとって塾の存在はありがたい。
自分たちでは手の届きにくいところを、塾がカバーしている。
共存していくことが理想だと思う。

私も同じ気持ちでしたので、ちょっと泣きそうになりました。

利用者様の声

「(全員に)塾が不要」という事は、普通に考えてあり得ません。
やはりご利用頂いた方からは必要性を感じてくださっています。
また、もっと早くから利用しておけばよかったという声もいただきます。
頂いた声を大切に受け止め、私にできる事をしていきたいと思います。

にほんブログ村 地域生活(街) 東北ブログ 米沢情報へ
にほんブログ村

タイトルとURLをコピーしました