炭酸水素ナトリウムを加熱する実験②

炭酸水素ナトリウムを加熱する実験

炭酸水素ナトリウムを試験官にいれ、ガスバーナーで熱するという実験でした。
この実験では実験装置の図が重要なのですが、著作権的にきれいなものはちょっと出せません。
汚いものも出せますが、教科書に必ず載ってますので、教科書を見てください。

この実験で問題になるのは大きく次の4点です。

  • ①化学反応式
  • ②発生する物質:二酸化炭素
  • ③発生する物質:水
  • ④発生する物質:炭酸ナトリウム

今回は二酸化炭素についてです。
なお、単純に二酸化炭素の話だけして終わりと言うわけではありません。
この実験独自のものもありますし、何故この実験が問題になるのかにも触れていきます。

この観点は他でも応用できます。
高得点目指す方はこういう観点をしっかり把握しておけると良いですよ。

そしてこの実験には注意点が大きく2点あります。
そのうちの1つに今回触れます。

二酸化炭素

まず二酸化炭素と言えば次のような物質です。

  • 木などが燃焼すると発生する
  • 動物の呼吸で酸素と交換される
  • 温室効果ガスと言われ、地球温暖化に影響している、と言われる

前回も出てきましたが、化学式で書けばCO2です。
「二酸化炭素」
塊で分解して⇒「二酸化」+「炭素」
元素記号に変換⇒「O2」+「C」
後ろから⇒「C」+「O2
完成⇒「CO2

二酸化炭素は試験管内で熱された炭酸水素ナトリウムから発生し、ゴム管を通り、ガラス管を通り、水上置換法で集められます。

試験管に元々あるもの

試験管にはもともと空気があります。
ゴム管にも、ガラス管にもあります。
試験管内で発生した二酸化炭素の前に、その空気が水上置換法で集められてしまいます。
これは実験に関係のない物質が混ざってしまうので都合が悪いですね。
試験管に最初に集められた空気を多く含む気体は取り除きたくなりますね。
そのため、実験の最初の方で水上置換法で集められた気体は捨てます

試験管は捨てないでください。

水上置換法で集める

発生した空気を集める方法は3つありました。
上方置換法、下方置換法、水上置換法です。
それぞれの集気法の特徴や、どのように選択するか、理解できていますか?

理由はなぜか?
どのような気体を上方置換法で集めるか?
理由があるから問題になりやすい。

上方置換法は、試験管の口が下になるようにして集めます。
試験管の上方にある空気と入れ替えます。
集めたい気体が空気よりもより上に行く、つまり密度(単位体積当たりの質量)が小さいという必要があります。
「軽い」と言ってしまうと質量の大小になり、語弊があるのでボクはあまり好きではありません。
しかし、一般には「空気より軽い」と言えば「体積が同じとき」という暗黙の背景が加わり、密度が小さい事を意味し、模範解答になっていることも多いです。
一応今回のボクの説明は「軽い」という表現をせず、「密度が小さい」を使っていきます。
ということで、空気よりも密度が小さい気体でなければ上方置換法は使えません。

下方置換法は逆に下方で空気と入れ替えますので、空気よりも密度が大きい気体ということになります。

空気と似たり寄ったりの気体はこれらの集気法で集めることはできません。

では水上置換法の条件は?
これは水に溶けにくい事です。
水に溶けてしまっては集めることができなくなります。
アンモニア等の水に溶けやすい物質は向いていません。

しかし、上方置換法、下方置換法よりも、集めやすい方法です。
水と気体では明らかに水の方が重く、水は目に見えるので集まった量も一目瞭然です。
水に溶けなければ、水上置換法の方が優れていると言えるでしょう。

二酸化炭素は多少水に溶けます。
中学1年生のとき、BTB溶液の入った試験管に「オオカナダモ」を入れ、水中に息を吹き入れる実験がありますね。
息を吹き入れると二酸化炭素が水に溶け、水質が酸性に変わり、BTB溶液が酸性を示す黄色に変わります。
オオカナダモが二酸化炭素を使って光合成をすると、BTB溶液に含まれていた二酸化炭素が無くなり、青くなるという実験です。

ちなみに何故青なのかって不思議じゃありませんか?
「二酸化炭素が無くなったら中性になって緑色になるんじゃ?」と。
これは、BTB溶液が元々アルカリ性なんですね。
アルカリ性に二酸化炭素を溶かして酸性にしているので、二酸化炭素が無くなればアルカリ性になってしまうと。

という訳で、話を戻します。
二酸化炭素は確かに水に溶けます。
しかし、その量はたかが知れていて、そこまで溶けるわけではないんですね。
ですから、水上置換法を使って確実に集めるわけです。

集気法適する気体の特徴
上方置換法空気よりも密度が小さく、水に溶けやすい
下方置換法空気よりも密度が大きく、水に溶けやすい
水上置換法水に溶けにくい

そして水上置換法には集められた空気が視覚的にわかりやすいという特徴もあります。

実験の注意点

物質を加熱し、水上置換法による集気法を使っている場合、注意すべき点があります。
「気体は熱によって膨張する」と言う性質が「試験管は急激な温度変化で破損する」という実験の注意点を生むということです。

炭酸水素ナトリウムを加熱していますから、試験管の中の空気は膨張しています。
実験を止めガスバーナーの火を止めると試験管の空気は周りの空気によって冷やされます。
すると気体は収縮し、試験管内の気圧が下がります。
これはストローで水を吸っているような状態です。
水上置換法によりガラス管が水中にあると、水を吸い込みます。
これが試験管の中に入り込むと・・・

パリンッ
※実際の音は知りません・・・。どちらかと言うと「ボンッ」という爆発音かもしれません。

これは危険なので、ガラス管を水中から取り出してから、ガスバーナーの火を止めます

石灰水

水上置換法で集められた気体は本来わかりません。
実験の結果を知っているボクたちは「二酸化炭素でしょ?」と思うかもしれません。
しかし、炭酸水素ナトリウムかどうかもわからずに熱して出てきた気体が何かというのは誰もわかりません。
発生した気体の正体を知る術が必要になります。

ということで水上置換法で集められた気体が二酸化炭素であることを確認する方法は何でしょうか?
石灰水ですね。
これは知識なので、わからないときは考えても答えは出てきません。

石灰水に二酸化炭素を溶かすと白く濁ります
気体が集められた試験管に石灰水を入れ、よく振ります。
白く濁ることで二酸化炭素が集められた、二酸化炭素が発生していたということを確認することができます。

ここで学びを止めてはもったいない!
こうした何か物質を特定する薬品はいくつかあります。
先のBTB溶液もその1つです。
「指示薬」や「試薬」と言われます。
中学生では次の一覧位を覚えておくと良いですね。

薬品何を調べるか見分け方
BTB溶液酸性、中性、アルカリ性黄色が酸、緑が中性、青がアルカリ
石灰水二酸化炭素よく振って溶かし、白く濁るか
リトマス試験紙酸性、中性、アルカリ性青いリトマス試験紙が赤くなったら酸
赤いリトマス試験紙が青くなったらアルカリ
両方変わらなければ中性
フェノールフタレイン溶液アルカリ性透明なら中性、赤紫ならアルカリ
塩化コバルト紙水※赤、桃色なら水
ヨウ素液デンプン青紫色ならデンプン
ベネジクト液麦芽糖過熱して赤褐色なら麦芽糖

※塩化コバルト紙は純粋な水を調べるわけではないので注意

また、気体の確認方法としては次のようなものもあります。

気体どうやって調べるか見分け方
二酸化炭素試験管に集めた気体を石灰水に溶かす白く濁る
酸素試験管に集めた気体に線香を近づける激しく燃える
水素試験管に集めた気体にマッチを近づけるポンッと音を立てて燃える

このあたりも「発生した気体の確認方法」として出題されやすいですね。

まとめ

  • 集気法とその選択についての理解を説明できるように!
  • 水上置換法の実験終了後はガラス管を水中から出してから火を止める
  • 試験管に水上置換法で集められた気体、最初は空気が混ざるので捨てる
  • 二酸化炭素の確認方法は石灰水、その他の気体の確認方法も抑えておく

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